地元に良く通っていたラーメン屋があって、店員にも顔を覚えられていて、何時もサービスして貰っていたのだけど、もう2年近く行ってなかった。昔はテレビチャンピオンで優勝した程の有名店だった。だけど店長が失踪してしまい、それからは奥さんが全てを切盛りする事になった。しかし奥さんではスープの味が上手く再現出来ず、全く別物に変わってしまったのだ。ラーメン通からは罵詈雑言を浴びせられ、2時間並ばないと食べられないラーメン屋は、閑古鳥の鳴く侘しい店になってしまったのだ。この店の評判を調べると、何処も彼処もスープの味への文句ばかりで、「昔は良かったのに」と言う人間しかいないのである。僕がそのラーメン屋に通い始めたのは店長が居なくなってしまった後で、店の評判が著しく悪くなってからである。この店に通い始めた切っ掛けは、たまに店の前を通ると、見掛ける度に奥さんが痩せ細って行き、店から出てくる客は悉くラーメンの文句を言っていて、居た堪れない、切なくなって、僕は何だかこの店と奥さんが心配になって、それから頻繁に店へ通う様になったのだ。でも2年前、それを止めた。そんな気持ちで店に通われるのも迷惑だろうと思ったからだ。でも今日、2年振りにそのラーメン屋に行ってみた。またあのラーメンが食べたいと思ったからだ。それなら許されるだろうと思ったからだ。店に入ると、昔と同じく、奥さんが一人でスープを作っていた。準備中の看板が掛かっていたが、僕に気付いて開けてくれた。普通のラーメンを注文すると、2年間全く行ってなかったのに、サービスで味付き卵がトッピングされ、チャーシューも普通より多めに乗せられていた。コーラまでサービスで頂いた。ここまでされると恐縮である。「昔、良くお店に来てくれていたのをはっきり覚えてます」と言ってくれた。何だか感激してしまった。ラーメンは美味しかった。「美味しかったです、また来ます」と礼をして店を出た。そうだ、これからは、美味しいからこの店に通えば良いのだ。何だか詰まらない話ですまん。

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居る場所はあるけど帰る場所がない。
2011/10/25(火) 10:32 過去の日記 記事URL COM(0)

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